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その墓石を削って煎じて飲めば病が治るといわれる医聖・永田読本

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ある医者の墓石(藍塔)を削って粉にし、これを煎じて飲むとどんな病も治ってしまう。そんな言い伝えがあります。

実際に病気が治るのかと言われれば、たぶん治らないし、岡谷市の指定文化財なので、削ったりしないでもらいたいけれど、そんな伝説が残っているほどすごい医者がかつて岡谷でくらしていたそうです。

彼の名を永田読本(トクホン)と言います。医聖とまで呼ばれた名医です。

 永田読本とは

読本は戦国時代後期から江戸時代初期にかけての活躍した医師です。武田氏に仕え、信虎・信玄の二代にわたって侍医をしていたことから「甲斐の徳本」などと呼ばれています。

武田家滅亡後はまた駿河・甲斐・相模・武蔵などの諸国をめぐり、貧しい人々に無料で薬を与えたり、安価で診療を行ったといわれています。この際、どんな治療を行っても報酬として16文以上の金額を受け取らなかったため「十六文先生」などとも呼ばれています。

晩年は岡谷で暮らし、御子柴家の娘を妻に貰い一男をもうけたそうです。そして、なんと118歳で没したと言われています。

権力を恐れず、貧しさに負けず、常に庶民のために心血を注いだため「医聖」と称されました。

読本の伝説

あるとき、将軍様が大病を患いました。家来らは「街で名医と評判の医者がいるので診てもらってはどうか」と読本のことを薦めますが、将軍の御典医たちは良い顔をしません。

結局、将軍様の命には代えられぬと読本はお城に案内されました。部屋で待っていると彼の前に1本の糸が伸びてきました。そして、「これにてどうぞ。」と糸の先を渡されました。

昔は高貴な方に庶民が触れることなどできませんでしたので、病人の手に糸を結び、それを医者が手に取って病気の判断をする糸脈と言われる診察をするよう言われたのです。

しばらくその糸を握った後、「猫の脈であれば、私よりも馬医者にでも診てもらった方が良いのではないか?」と言って帰り支度をはじめてしまいます。

実は御典医らが意地悪をして、猫の足に糸を結んでいたのです。そのことを見抜き、帰ろうとしたので、御典医たちはあわてて謝罪し、みな読本の実力に恐れ入ってしまいました。そして、再度お願いしました。

頼まれた読本はしっかりと将軍様を診察すると、一服のお薬をもるりました。すると将軍様の病気は治り、みるみる回復しました。

見事な腕前にすっかり喜んだ将軍様は「何でも褒美をとらせる」と言いますが、「どこの誰に頼まれようと16文で結構です。将軍様も百姓も同じでございます。」と申し上げて帰ったと言います。

トクホンの社名(商品名)の由来

トクホンという会社がありますが、その名の由来はこの永田読本です。

同社は創業時は鈴木日本堂と言いましたが、昭和8年に医聖の異名を持つ永田読本から名をとった外用消炎剤「トクホン」を発売。これがヒットしロングセラーとなると平成元年に商品名であったトクホンを社名として改めました。

尼堂墓地の読本の墓(藍塔)

さて、前置きが長くなりましたが、いよいよ読本の墓石を見てみましょう。

彼の墓は岡谷の尼堂墓地にあります。庶民のために努力なされた医聖の墓らしく、一般の方のお墓と並んであります。

ですので、探すのが一苦労です。かなり迷いました。はたから見れば不審者か墓荒らしだったでしょう。でも、近くまで行けばどれが読本の墓かは簡単に確認できます。案内もありますが、それは必要ありません。屋根を見れば一目瞭然です。

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前述の通り、削った石粉を煎じて飲めば病が治ると信じられていたため、藍塔の屋根は一面穴ぼこだらけになっています。

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神宮寺石という割と加工しやすい石で作られています。そのため「削って飲む」という発想が生まれたのかもしれません。

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また、藍塔の内部に小石が沢山詰め込まれていますが、この石にも伝説があり、これを借りて手足のイボを擦れば、それが治ると言われています。石を持ち帰って使い、イボがとれたなら、石を倍にして藍塔内に返すそうです。石だらけなのはそのためです。

ボコボコの屋根を見て思うこと

墓石をよく見ると、わりと新しい傷も多く、最近でもこの墓石を削っている人がいることが確認できました。飲んでいるかまでは確認のしようもありませんが、まぁ、たぶん、服用されているのでしょう。

この墓石をみると健康の大切さを感じます。昔の人だって、まさか石が体に良いとは思わなかったでしょう。しかし、それでも健康を損なえば、そんな伝説にすがりたくなる。現代人が怪しげな壺を買ったりするのと同じではないかと思うのです。

 

いつの時代も健康第一。皆さん、ご自愛ください。

では、また。

 

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